-Unbalance + Automatic-   津村ユキヲnote

日記-雑感-その他     

「Story tree galaxy」at Tetugakuya

このブログではおなじみの(?)カフェTetugakuyaさんの金庫室は、時折ギャラリーや演劇などイベントスペースとなるのですが、2018年のクリスマス時期には、ブックツリーというものを作品ぽい感じで作らせてもらいました。そのことを踏まえて。

2019年の十月ごろ、いつもの哲学読書会に参加させてもらった折、私は店主さんにこう言ったのである。「去年みたいなブックツリー、よかったらまた作りましょうか、どうせならもっとでかいやつ」

正直断ってくれてもいいと思っていた。自分の中の「作品を作りたい欲求」と、「大変な労力を払うことになるのが分かっている現実」のしんどさとの葛藤があったからである。

だが店主さんは「ぜひおねがいします」とおっしゃった。しょうがねえな、やるか。そういえば、今まで作ってきた作品もだいたいそういうかんじだった。

思い描いていた構想のとうり、だいたいできたところで店主さんが「この作品についての宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』のセンテンスを抜き出してみてほしい」という言葉があり、そこからイメージが広がってインスタレーション作品としての要素が深まってよかった・・・ということもそういえばありました。

 

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こちらの写真は制作中のワンシーンを店主さんが撮ってくださったものですが、店主さんの影が映り込み、なにか魔女的な・・・私が操られているような印象をもたらしかねない面白い写真ですね。

 

それはともかく、このブックツリーの芯の部分に新聞紙が巻いてあるのですが、その新聞記事見出しは「天皇陛下即位の儀」です。

このブックツリーはすべて「物語」・・・小説・伝記・歴史文学・漫画などの単行本で出来ているのですが・・・。もちろん意図してのことです。だから「story tree galaxy」というタイトルなのです。

本の一冊一冊を銀河の星になぞらえたイメージなのです。だからキラキラ星のように光る。そして銀河の中の「須弥山 」兼「教会の丘」がこの積みあがったtreeなのです!

で。まあ、物語の芯に日本人としての大きな物語を仕込んでいたというわけなんですね~!

 

 

ごめんなさい後付けです。ていうか何を言っているのかわからないかもしれませんが。

 

新聞紙をあそこに巻いていたのは、鉄製のオベリスク(園芸用)に本をくっつけると錆がついて汚れるからです。たまたま巻き付けた新聞が天皇陛下即位のやつでした。

 

銀河鉄道要素を深めるために物語に登場する「三角標」を作り机の上に置きました。そしてその机の上に「銀河鉄道の夜」からこの作品を思わせるセンテンスの部分を抜き出したプリントを二枚置きました。

 

以下その抜き出した文章です。

 

銀河鉄道の夜」より。

「そうだ。おや、あの河原は月夜だろうか。」  そっちを見ますと、青白く光る銀河の岸に、銀いろの空のすすきが、もうまるでいちめん、風にさらさらさらさら、ゆられてうごいて、波を立てているのでした。 「月夜でないよ。銀河だから光るんだよ。」ジョバンニは云いながら、まるではね上りたいくらい愉快になって、足をこつこつ鳴らし、窓から顔を出して、高く高く星めぐりの口笛を吹きながら一生けん命延びあがって、その天の川の水を、見きわめようとしましたが、はじめはどうしてもそれが、はっきりしませんでした。けれどもだんだん気をつけて見ると、そのきれいな水は、ガラスよりも水素よりもすきとおって、ときどき眼の加減か、ちらちら紫いろのこまかな波をたてたり、虹のようにぎらっと光ったりしながら、声もなくどんどん流れて行き、野原にはあっちにもこっちにも、燐光の三角標が、うつくしく立っていたのです。

もう一つ

銀河鉄道の夜」初期形より。

そのひとは指を一本あげてしずかにそれをおろしました。するといきなりジョバンニは自分といふものが、じぶんの考えといふものが汽車やその学者や天の川や、みんないっしょにぽかっと光って、しいんとなくなって、ぽかっとともってまたなくなって、そしてその一つがぽかっとともると、あらゆる広い世界が がらんとひらけ、あらゆる歴史がそなはり、すっと消えると、もうがらんとした、ただもうそれっきりになってしまふのを見ました。だんだんそれが早くなってまもなくすっかりもとのとほりになりました。

 

 

引用とは別に、この作品の解説のような文章を書きました。

 

Installation art 【Story tree garaxy】

「物語(story)」とは何だろう。

神話・英雄譚・幻想・怪奇・伝記・歴史 等々。様々な物語。なぜそれらは語られ記されてきたのか。

一つ言えることは人間はだれしも自分の「物語(narrative)」を自然と持つ生き物ものであるということ 。

様々な形でそれが伝わり他者の意思や感情・経験を蓄積することは、きっと人類の文明の発達と直結しているということ。

「わたし」という存在は家族や限られた人間関係のなかからだけでなんて出来ていない。

読み、鑑賞し触れてきた無数の物語はたしかに私をカタチ作っている。

「物語」はそれぞれがひとつのセカイであり星の瞬き。

無数に無方に広がる銀河のよう。

星めぐりの旅に今日もでかけよう。

 

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こちらが作品の全体写真です。ツイッターモーメントにまとめてありますので興味がある方は見てください。

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三角標の横にあるのは、宮沢賢治作詞作曲の「星めぐりのうた」のオルゴールです。宮沢賢治生誕百年の時に花巻に行っておみやげで買ったやつ。このオルゴールを回していただくことによって作品の完成となります。

 

Tetugakuyaさんのおかげさまででこのような作品を作らせていただくことができました。

喜んでいただけた方もいらっしゃったみたいでとてもよかった!楽しかったです。ありがとうございました!

 

このブックツリー、解体した折、使用していた本を販売しました。伝説の「ユキヲ書房」を復活!という触れ込みで。モーメント参照。

とりあえず・・・やれることをやりきった感があり満足です・・・。

 

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更に詳しい様子はツイッターモーメントにまとめてあります。↓

 https://twitter.com/tsumurayukiwo/status/1219598500544933888?s=20